
クーリング・オフは、消費者側が一方的に契約の申込みを撤回したり、契約を解除できる制度です。消費者を保護するための強力な権利ですが、行使できる取引や行使期間が8日間または20日間と限られています。
クーリング・オフとはどのような制度なのか、仕組みと注意点を徹底解説します。
クーリング・オフとは
クーリング・オフとは、契約の申込みや契約を締結しても、一定期間ならば、頭を冷やして考え直し、契約の申込みを撤回したり、契約を解除できる制度のことです。
契約は、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致することによって成立します。契約の成立時点は、相手方が承諾した時です(民法533条1項)。
そのため、契約の申込みを撤回すれば、相手方が承諾する余地はないため、契約は成立しません。
また、相手方が承諾したとしても、クーリング・オフによって契約を解除することができるということです。
クーリング・オフは消費者が一方的に主張できる
契約の相手方が承諾した場合は、契約が成立します。
一旦契約が成立すると、契約の当事者はその内容に拘束されますし、原則として一方的に解除することはできません。
民法上、契約解除ができるのは次のような場合です。
- 相手方が契約上の義務(債務)を履行しない場合に催告したうえで解除する(民法541条)。
- 相手方の債務が履行不能の状態にある場合等に催告せずに解除する(民法542条)。
簡単に言えば、契約解除ができるのは相手方が契約で決めたことをやってくれない場合に限られるということです。
それに対して、クーリング・オフは一定の期間内であれば、消費者側から一方的に契約解除ができます。
相手方、つまり販売業者側が商品を引き渡してくれないとか、約束したサービスを提供してくれないからと言った事情は必要ありません。
その意味でクーリング・オフは消費者に認められた非常に有力な権利ということでできます。
クーリング・オフは行使できる取引が限られている
クーリング・オフは消費者にとって非常に強力な権利ですが、消費者の立場なら如何なる場合でも行使できるわけではありません。
例えば、コンビニで商品を購入した後で、商品が気に入らなかったから、クーリング・オフするということは認められていません。
つまり、通常の売買契約では、クーリング・オフをすることはできません。
クーリング・オフできるのは、消費者がトラブルに巻き込まれがちな特定の取引を行った場合だけです。
具体的にどのような取引が該当するのかは、特定商取引に関する法律(特定商取引法)に規定されています。
次の取引です。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 特定継続的役務提供(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)
- 訪問購入
- 連鎖販売取引
- 業務提供誘引販売取引
個々の取引がどのような取引なのかは、追々解説しますが、今は「特定商取引」と呼ばれる取引がなされた場合のみ、クーリング・オフができることを押さえておいてください。
クーリング・オフは行使できる期間が限られている
クーリング・オフは消費者の強い味方ですが、強力すぎる権利であるために、販売者側としては、消費者からクーリング・オフされないかビクビクしながら取引せざるを得ないことになります。
つまり、消費者側の権利が強すぎると、特定商取引を行おうとする業者がいなくなってしまうおそれがあります。
それはそれで、消費者にとって、商品やサービスの提供を受ける機会がなくなってしまいます。
そこで、クーリング・オフできる期間が限定されています。基本となるのは、8日間と20日間で特定取引により異なります。
クーリング・オフ期間が8日間の特定商取引
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 特定継続的役務提供(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)
- 訪問購入
クーリング・オフ期間が20日間の特定商取引
- 連鎖販売取引
- 業務提供誘引販売取引
クーリング・オフ期間の起算点は?
クーリング・オフできる期間は、8日間と20日間ですが、いつの時点から8日間または、20日間なのか、つまり起算点を知ることが大切です。
起算点は、消費者が次のいずれかの書面を受領した日です
- 申込書面:申込みの内容を記載した書面
- 契約書面:売買契約又は役務提供契約の内容を明らかにする書面
なお、申込書面や契約書面は、紙の文書に限るわけではなく、消費者側が承諾した場合は、電磁的方法による提供でも良いとされています。
紙の契約書を受け取っていないから、クーリング・オフ期間のカウントが開始されていないと勘違いしてしまうと、知らない間にクーリング・オフ期間が経過してしまうので注意が必要です。
クーリング・オフの手続き、行使方法
クーリング・オフは、書面又は電磁的記録によって行います(特定商取引法9条1項)。
書面の場合は、郵便により文書を送るのが一般的です。
最低限、記載する記載事項は、次の5項目です。
- 契約年月日
- 契約者名
- 購入商品名
- 契約金額
- クーリング・オフの通知を発した日
国民生活センターや消費生活センターでは、「はがき」で書いても良いと紹介されていますが、これは相手がまともな業者の場合に限ります。
相手が悪徳業者や悪質な業者の場合は、はがきを送っただけでは、「届いていない」等と言われてしまい無視されてしまう可能性があります。
そのため、「内容証明郵便」を用いるのがより効果的です。
電磁的記録とは、インターネットのメールで送信する方法のことです。
販売業者側がクーリング・オフ専用フォームを用意している場合は、こちらから送ることでクーリング・オフができることもあります。
いずれの場合でも、送付した日付がわかるように、スクリーンショットを撮っておくべきです。
クーリング・オフの通知は8日(20日)以内に届かないといけないのか?
クーリング・オフは、「通知を発した時に、その効力を生ずる」とされています(特定商取引法9条2項)。
つまり、起算点の日から8日(20日)以内に発送していれば、実際に販売業者側に届いた日が、8日(20日)を過ぎていても問題ありません(消印有効)。
まとめ:クーリング・オフする際は専門家のアドバイスを受けよう
クーリング・オフは、申込書面や契約書面を受け取った日から、8日(20日)以内なら、消費者側が一方的に契約の申込みの撤回や契約の解除を行うことができる強力な権利です。
ただし、クーリング・オフできる取引は限られています。
また、はがきやメールなどでもクーリング・オフできますが、業者によっては無視されてしまい、トラブルが生じてしまうおそれもあります。
クーリング・オフができる期間は限られているので、分からないことがある場合は、速やかに、消費生活センターの相談員や弁護士、行政書士、司法書士などの専門家に相談することが大切です。

